豊饒の海を見つめて ― 縄文真脇温泉 [湯・動生活]

mawaki3.JPG

 地下3メートル、移植ごての先には、足の踏み場もないほど大量のイルカの骨が現れた。
 
日本海に突き出た能登半島内浦の能登町真脇。5千年前に暮らした縄文人たちは、目の前の真脇湾にカマイルカやマイルカを追い込んだ。息の根を止めた石ヤリも発見された。

 カマイルカは藤の花の咲く頃、マイルカは8~9月ごろ真脇湾に回遊してくるという。その海底地形は、イルカが接岸しやすい好条件を備えていた。縄文人たちは、その季節を暦に刻み、イルカの生態を熟知したうえで捕獲する海のスペシャリストであった。
 累々と横たわるイルカの骨の下から、三日月型などの文様を刻んだ長さ2.5メートルの木柱が発見された。イルカ漁にまつわるシンボリックな記念物に違いないが、これにどんな祈りを捧げたかはミステリーのままだ。

 縄文真脇温泉は、遺跡を眼下に、縄文人たちが漁に出た真脇湾に臨む、絶景の場所にある。頑丈な体格の男性が湯船に浸かっていた。地元の漁師だという。寒ブリ漁のことから話がおよび「村では戦前までイルカを獲っていた」と教えてくれた。
 真脇では江戸時代にも「イルカ回し」という追い込み漁が盛んで、その名は加賀藩内にも響きわたり、一時に1000頭も獲れたことがあるという。

 一条の白い波を残しながら、漁船が真脇湾に戻ってきた。豊饒の海は、5千年たった今も、恵みを与え続けているのだ。

※ 写真は真脇温泉からみた真脇湾

朝日新聞 東京本社配信 八ケ岳執筆 2009年3月6日 ”湯の旅”
http://www.asahi.com/travel/yunotabi/TKY200903060101.html


nice!(0)  コメント(2)  トラックバック(0) 

nice! 0

コメント 2

A.E.G

私も数年前、この遺跡に行きました。
山の中に住んでいるせいか、海を見るだけでも気分が高揚します。
たまには海で釣りでもして、海の縄文人気分を味わうのもいいですね。
by A.E.G (2009-04-28 23:00) 

八ケ岳

この海、今ではナマコが特産だそうです。
確かに湾を覗くと、ナマコがウニョ・ウニョしてました。
富山湾のホタルイカもいいですね。

真脇温泉、竪穴住居を模した内風呂がウッディでいいですよ。信州人にとって海は憧憬です。
by 八ケ岳 (2009-04-28 23:22) 

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 0

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。