長野県宝 唐沢B遺跡の神子柴型石斧 [石器]
神子柴遺跡と双璧をなす唐沢B遺跡の局部磨製石斧と打製石斧(左2点)である。
重量感があり、美しいシルエットをなす逸品である。
ほれぼれするようなその姿からは、私的には象徴性のオーラを感じる。
長野県では県指定文化財を長野県宝と呼ぶが、指定文化財というより、お宝チックでいい感じがしないだろうか?
本資料は、現在上田市の信濃国分寺資料館で展示されている。
http://museum.umic.ueda.nagano.jp/kokubunji/
175万年前ハンドアックスをエチオピア南部で発見 [石器]
少し前のニュースだが、エチオピア南部のコンソ遺跡から、175万年前のホモ・エレクトスが用いた最古級のハンドアックスを発見されたと報じられた。
諏訪元さんら日本とエチオピアの合同調査隊チームの調査によるらしい。
この遺跡からは、ほかにも85万年前までの90万年間にわたる大量のハンドアックスが出土。時代とともに形状や加工法が洗練されていく様子がうかがえるといい、初期人類の行動の進化を知る手掛かりと期待される。
コンソ遺跡からは石器約350個が発見され、うち4個が175万年前のハンドアックスと判明した。
※ 左端上下が175万年前のもの
列島で最大級の神子柴型石斧 [石器]
32cmある神子柴型石斧の図化をしている。
長野市宮ノ入遺跡の石斧で、正確に言うと、国内2位の長さ。
もっとも長いのは鳴鹿山鹿遺跡(34cm)のものである。
先端部のみ風化が大きく異なり、それ以外がソケットに入っていたことを示すのかもしれない。
今年度中には、何かに報告する予定である。
細石刃石核のトレース [石器]
最近、終業後、毎日2個ずつ、野辺山の細石刃石核のトレースをやっている。
もはや老眼にはこたえるが、デジタルトレースなどという芸当はできないし、
むしろ、リング・フィッシャーを丸ペンで入れる時は、私の至福の時間である。
現在50個のトレースを終えたが、ゴールは矢出川遺跡の500個の細石刃石核のトレースだ。
1個約40分。一応、2年間で仕上げ、資料集刊行を考えている。
※ 写真は野辺山ハケ地区の細石刃石核。
下呂石の石琴 [石器]
下呂石の石琴の音色が先の下呂石フォーラムで披露された。
曲は、組曲『下呂石物語』 (…ってなんだ!)
サヌカイトの石琴というのは知っていたが、下呂石は初めて。
なんともやさしい音色がした。
これだけの短冊形の下呂石を製作・準備するのって大変そう。
お手軽 石器コピー実測 [石器]
織笠昭さんだったら怒りそうだが、私は石器のコピー実測をよくやる。
剥片石器で、偏平で、遺存の良いものに限ってだが、
①石器にチャコを入れ、②コピー(白布をかぶせ、強く押されるフタはしない)、
③コピーをマイラフィルムに写す。写真の頁岩の石匙で、片面15分で完成する。
(断面はマコ実測)
打製石斧はコピー実測で、バンバカやる。
実測作業は、できれば手早く行いたい。もちろん正確に。
コピー機のスキャン性能も向上し、この方法は、けっこう便利である。
しかし最近では、実測はすべて業者まかせのところも多いので、関係ないか。
※ ちなみに神子柴の石器は、重文なのでこの方法は採用しておりません。
肉眼では神津島産、果たして蛍光X線分析の結果は? [石器]
矢出川遺跡の細石刃石核類17点を、望月明彦先生に産地同定していただくことになった。
写真はそのうち1点の細石刃石核。
私の肉眼の蛍光X線(笑)では「神津島産」と推定される。
(けっこう見た目が当たります)
果たして実際の結果はどう出るか!
産地同定結果が出されたら、当たっていたかどうか、報告します。
ジュンクワさん、この産地、どう見えます。
柏峠だったりして・・・
つ、ついに来た 使用痕デジタル撮影ユニット [石器]
ついに使用痕デジタル撮影ユニットがやってきた。
いや本来、金属顕微鏡デジタル撮影ユニットというべきか。
20年以上前から使っているオリンパスの金属顕微鏡BHMJ。
共に旅し、白草遺跡の荒屋型彫刻刀や各地の掻器など、数々の使用痕を覗いた戦友だ。
これには35mmのフィルムカメラが付いていて、いくつもの使用痕を撮った。
泣かされたのは、出張先で撮影した使用痕が、まったく写っていなかったこと。
フィルムの巻き上げが悪かったのだ。
また、高倍率だとピントがブレやすく、膨大な枚数の撮影を要し、
フィルム・現像代もばかにならなかった。
今回、科研で買ったデジカメと撮影アタッチメント。ああ、有難や。
これでもう、「写っていない恐怖」から解放される。
その場で見れるし、枚数も気にならない。・・・バンバン撮るゾー!
それにしても、オリンパスの代理店の若い社員がいった言葉が可笑しかった。
「20年も前の顕微鏡初めて見ました」
私は返した。「文化財級でしょ」
荒屋型細石刃 [石器]
「荒屋型細石刃」は綿貫俊一とともに命名した。
通常細石刃は、不要部分が折断されるが、荒屋型細石刃の場合、完形のまま利用される。
細石刃の背面の右側縁と、裏面の左側縁の末端に細部加工がなされるのが特徴である。
もちろん、写真右端のように両端が折断された中間部も存在する。
植刃器にカエシをもたせるように「八の字」状に装着されたとみたが、芹沢長介氏らによる復元案は異なるようである。
これで何を捕獲したのか。
17,000年前、氷期の利器。新潟県荒屋遺跡の表面採集品。
「白保竿根田原人が石器を使わなかった」とナゼ言える? [石器]
石器使わなかった旧石器人? 石垣島・白保竿根田原洞穴。
朝日新聞、2011年2月6日の記事である。http://www.asahi.com/culture/news_culture/TKY201102040350.html
「旧石器時代人骨が出土し、再調査が行われた白保竿根田原洞穴=沖縄県石垣島2万年前の旧石器時代人骨が見つかった沖縄・石垣島の白保竿根田原(しらほさおねたばる)洞穴の本格調査が昨年、終了した。出土品の詳しい分析が続いているが、沖縄で初の出土になるかと注目されていた旧石器は、今のところ確認できていない。一方、新たな人骨資料は増加が予想され、石器を使わない人類だった可能性も視野に入れざるをえなくなりつつある」
写真は八ケ岳が訪ねたときの白保竿根田原洞穴の調査。
白丸のあたりが旧石器の包含層とみられていた。
これだけの狭い範囲の調査、タフォノミーや遺跡形成過程の問題も残る。
ナゼ、このような状況で「石器使わなかった旧石器人?」という記事となるのか、疑問である。
発掘者たちも困惑するのでは。遺物整理も続いているのだから・・・