ホンモノ どっち? [博物館]
現在、企画展”土偶”ではオリジナルと複製の2点を並べて、比べて見ていただいている。
どちらがオリジナルかは、別の場所に表示している。
オリジナルをゆっくりご覧になりたい方には大変申し訳ないのだが、
実際は、皆さん展示品の細部を食い入るように比較・観察してくれるところがポイントだ。
試みとしてやっているが、苦情はなく、楽しんで見てくださる方がほとんどのようだ。
さすがに考古学研究者は、ほぼ全員が識別する(・・・・でないと困る)。
ドクロのような人物が表現されたこのマジカルな土器は、長野県南箕輪村から発見されたもの。
久保上ノ平遺跡の有孔鍔付土器で、すなわち口の部分に穴が開いており、皮をはって太鼓にしたという説と、酒づくりの土器だという説がある。私は太鼓説をとっている。
オリジナルは6月30日まで展示。そのあと、イギリス大英博物館での”土偶展”に旅立つ。
決戦のゴールデン・ウィーク [博物館]
世間では16連休だと騒いでいるのに、こちらは16連”勤務”である。
GW、5月5日は、8月15日と並んで一年でいちばん博物館入館者が多い日だからだ。
年間何人はいって、いくら儲かったか、私が行政サイドから問われるのはこればかりだ。
まるでドライブインである。どんな展示や博物館・教育活動をしたかではない。
だからついつい神経質になってしまう。
ちなみにウチの博物館は、以下の数値が平均である 【行政情報として開示】。
・入館者 3万人 ・年間予算 1千万円 ・年間収入 500万円
これが6年前、共産党議員によって、議会でヤリ玉に上げられた。
年間500万円の赤字施設で、お荷物だというのである。
共産党はいつから自民党のような採算第一主義を唱え始めたのか。
採算では測れない教育施設を、擁護してくれる立場ではなかったか。
4年前、今度はその議員が、町長に当選してしまった。私は粛清を覚悟した。
しかし蓋を開けてみると、驚いたことに強力な味方となってくれたのである。
予算もつけるし、他で強力にPRもしてくれる。
批判者から主体者になったことにもよるが、館を訪れるたくさんの子どもたちの笑顔を見て、
考えが変わったらしい。
・・・・・世の中皮肉なものである。
※ 写真はミュージアムの縄文ワークショップ【勾玉づくり】
ちなみに今日 5/3 の入りはまあまあ。ほっとしています。
破壊される女神 1 [博物館]
企画展 ”土偶 -破壊される女神-” が、4月25日よりスタートした。
準備はいつも綱渡りだ。
スタート前日の午前中まで、資料借用に飛び回っていた。
それまで少しずつ展示していたので午後は展示の最終調整、なんとか夜10時にメドがついた。
秋にイギリス大英博物館で土偶展があるため、主要な土偶は文化庁に押さえられ借用不能。
加えて新潟県立博物館でも”火焔土器の国”での土偶展示が4/25より始まるため、ウチに回ってくる土偶は限られていてキツかった。
国や県には太刀打ちできない。それでも、考古学研究者仲間に助けられ、秋田から岩手、山梨・長野など東日本の表情豊かな土偶を、多数借りることができた。
心がけたことは、説明的な考古の【資料展示】にならないことである。
写真家小川忠博さんの協力を得て、180cmまで身長を伸ばした土偶の大バナーを作った。
展示品が小さいだけに人物大のバナーはシンボリックに展示を演出した。
土偶の豊かな表情を、縄文人の祈りを、感性のままに見ていただけるように考えたが・・・
展示のサブタイトルは、【破壊と女神】 というアンビバレントな言葉を対置した。
それにしても、いつも企画展とは悩ましい。
”土偶展”はこちら http://w2.avis.ne.jp/~jomon/plan/index.html
国立科学博物館の旧石器 [博物館]
2年ほど前、国立科学博物館日本館のオープンに際し、旧石器時代の展示のお手伝いをした。
http://shinkan.kahaku.go.jp/floor/n-2f-n_jp.jsp
国内の代表的な旧石器を集め、グラフィックなどにもした。
旧石器の展示でとくに苦労するのは、モノが地味なことだ。
たとえば縄文時代だったら、火焔土器や土偶は、それだけで存在感がある。
「これが普通の石コロとどう違うんですか?」
旧石器を展示してしばしば受ける質問である。
石器をどう見せるか。これはナカナカの難問だ。
科博の展示の中には、マイ・トレジャーである矢出川遺跡の細石刃石核の実物も展示してある。